身内のがん闘病の経験から「情報は希望である」という声に共感し、一般の患者にも海外の最新情報を伝えたいと、『海外癌医療情報リファレンス』を開設しました。10年のあいだ、このサイトをご愛顧いただきました閲覧者の皆様に心から感謝申し上げます。
立ち上げ当時はインターネットも初期の頃で、日本語ではがんの情報もほとんどありませんでした。腫瘍内科医の制度もなく、がん治療薬も米国の3分の1とも言われていた頃です。情報を求める声とともに、1人、2人と翻訳ボランティアが増えていき、現在では140名近くのボランティア翻訳者と42名の監修者が在籍しています。10年間で3000記事以上を翻訳しました。
研究者や医療者、がんサバイバーをはじめとした方々の多大なご尽力により、この10年で日本のがん診療の背景も大きく変化したと認識しています。海外や日本からの研究報告もニュースで数多く目にするようになり、ドラッグラグを含む多くの問題が改善され、患者会や自助活動も盛んになりました。国立がん研究センターをはじめとした医療機関でも多くのがん研究が行われ、たくさんの日本独自の有用なデータや資料が提供されています。適切ながん診療へと患者を導く制度が次々と整備されてきているのを目の当たりにして感慨深く感じます。
いまだ、がんは世界からなくならず、日々がん患者は増え続けています。そのため世界中が力を合わせてがん撲滅のための研究に取り組んでいます。そして、最善の治療を作るための多くの重要な医学的エビデンスは、(日本の発表を含めて)海外の文献がもとになっています。例えば、米国政府は人類のがん研究の進歩のために、1960年代からPubMedですべての医学論文抄録をインターネットで公開していますが、言語の障壁は大きく、一般の日本人はなかなかその利益を享受することが困難です。また一方では、情報過多の時代において医学的でないがん情報がまかり通っている現実もあります。乗り越えるべき数々の課題に一つでも貢献できればと考えます。
『情報は希望』、『情報は力』、そして『情報は命』であるとの言葉はそれぞれ、今までに出会ったサバイバーの方々から頂いた言葉です。なによりの激励として心に深く刻まれています。
『海外癌医療情報リファレンス』は、がん撲滅を願って集結した(がんサバイバーを含む)翻訳者および専門家により、これからも上質なエビデンス情報の蓄積と、「必要とする患者さんに必要ながん情報を届ける」活動を継続していく所存です。そして、患者参加型医療のための医療リテラシーの向上、およびがん診療や研究への貢献とともに、患者会やがん支援組織の国際交流にもお役に立てることを願っています。
情報の大海の中では、私たちができることはほんのわずかかもしれませんが、私たちの翻訳チームがみなさまのお役に立てることがあれば幸甚です。
今後とも、『海外癌医療情報リファレンス』を宜しくお願い申し上げます。
『海外癌医療情報リファレンス』10年の主な歩み
年号 | 沿革 |
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2004年(平成16年) |
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2006年(平成17年) |
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2008年(平成20年) |
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2009年(平成21年) |
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2010年(平成22年) | |
2011年(平成23年) |
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2012年(平成24年) |
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2013年(平成25年) |
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2014年(平成26年) |