情報の品質と責務

Responsibility|信頼性を守るしくみ

世界標準のエビデンスに基づく情報の配信

JAMTが《海外癌医療情報リファレンス》をはじめ、さまざまな媒体を通じて一般に公開している情報は、JAMTのメンバーによって翻訳され、監修と校正を経たものに限られます。このプロセスはいかなる場合にも厳しく守られます。

「医療情報」というのは大変難しいもので、次々と相反する論文が発表されたり「今日の標準が明日には変わっている」ということも少なくありません。公開時にはどれほど医学的に確かであると確認されたはずの情報であっても、時間を経て古くなるだけで「有害」になりうる危険性をはらんでいるものです。

特に、癌治療の必要性に直面している患者・家族にとっては、「藁をも掴む思い」で新しい治療法や情報にも望みをつなぐという切実な状況があります。だからこそ、医学的根拠(EBM)に基づいた情報発信が大切だと考えています。海外新薬などのニュース情報を「夢の新治療」と捉えずに、どのような人に、どのような確率で、どのような効果があったのかというデータを見て判断できるようになっていただきたい、という思いがあります。

医療情報の品質を守るため、ポリシーを順守

ですから、JAMTは、医療情報の翻訳と公開にとって大切なのは、情報そのもののリリースタイミングや精度だけでなく、より深く厳しい「品質」を守ることと考えて、以下のポリシーを遵守しています。

<JAMTの「品質」に対するポリシー>

  1. その時点で最も必要と思われる医療関連の情報を厳選する
    綿密なリサーチのもとに関係を築いてきた専門機関の発信する情報から、さらに最も必要かつ重要な内容を厳選します。癌医療の大きな流れをつかみながら、膨大な医療情報から選りぬかれた「必知」のトピックスを正しく提供することが重要だと考えています。
  2. 高い技術による医療翻訳と適切で厳正な監修を徹底する
    JAMTの翻訳者は、有志の応募者のうち厳正なトライアル(スキル審査)に合格した技量・経験豊富な優秀な医療翻訳者です。ここからさらに、癌医療に関わる各領域の高度専門家が監修を行い、プロのライターが最終チェックをした上で外部に公開するという確実な品質管理体制をとっています。
  3. 一般の方を基準に、良質でわかりやすい日本語にする
    JAMTは一般にも向けた医療情報の無償提供を活動の基礎にしています。オーディエンスの多くは患者・家族はじめ専門家ではない一般の方々ですから、原文の情報精度や価値はわずかも損なわないように、しかし専門家でなくても理解できるような「読みやすい」日本語の文章をめざしています。
  4. リスクとベネフィットを適正に扱い、情報の非対称性の解消に貢献する
    ドラッグ・ラグ(新薬承認の遅延)と呼ばれる薬事承認・治療適用の遅れの弊害に絡む問題のように、日本での未承認薬を個人輸入で海外に求めざるを得ない患者さんの切実な状況を理解するからこそ、付随する有害事象を軽視せず、必ずリスクとベネフィットを発信することの重要性を忘れません。
  5. 適切な方法とタイミングでの公開と運用を徹底する
    どれほど有用で確かな医療情報も提供される際の文脈によって意味や価値が変わる危険性をもっています。JAMTで翻訳され、提供されるすべての情報には、出典・原文・リリースの時期・翻訳者・監修者がクレジットされ、情報の一部だけが独り歩きしないよう十分に配慮して運用しています。
  6. 速報性や網羅性を偏重せず、編集と蓄積を重視する
    確かな情報をタイムリーに提供することは重要ですが、速報性や網羅性に勝る媒体や手法は他にたくさんあります。JAMTは、「価値ある情報は、時間が経過しても進展の履歴、研究の蓄積としての役割を果たす」と考え、中長期的な編集視点で医学的な意義を検証し、情報のアーカイブに努めています。